上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
「では、これから藤井家に向かいますね」
佐山さんは運転席に乗り込みシートベルトを締めるとゆっくりと車を発進させた。
「忘れ物ないか? 亜子は必ずと言っていいほど何か忘れてくるからな」
「それは何日も泊まるときでしょ。 今日は一泊だから大丈夫! それより会社の前で待つのやめてって言ったじゃない」
「しかたないだろ。 この辺の駐車場はどこも満車だったんだ」
それならせめてもう少し離れた場所に止めてくれてもいいのに。
涼太を軽く睨むように見ると無表情のまま私を見ていた涼太は数秒後にぶはっ!と吹き出した。
「何?」
人が怒っているのに何で吹き出すのか意味がわからない!
「社長、 亜子さんに失礼ですよ。 周りの駐車場を探したのですがどこも満車でして、そうしているうちに亜子さんと入れ違いになっても困るので急遽あちらで待たせてもらいました。 申し訳ありません」
「ほら、佐山まで謝ってるんだから機嫌なおせよ」
いたって冷静な佐山さんとは逆に笑って話す涼太は完全に私を子供扱いしている。
大学生の頃、学校前に涼太が車で迎えに来てくれたことがあった。
翌朝、大学へ行くと色んな噂がたっていた。
どうやら涼太の乗ってきた車が目立っていたらしく友達に問いただされて大変だったのを覚えてる。
日に日に誰が作るのか変な噂も出てきて、お金持ちのフィアンセがいるんだっていうのから始まって夜の仕事をしていてお金持ちのお客がいるとか、よくない筋の人たちと付き合っているとか。