上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※
「亜子、話せるとこまで話したらいいんじゃない? 恵菜ちゃん口固いみたいだし」
雅はこんな時でも私に気を使った言い方で促してくれる。
“ 話せるとこまで ” なら言えるかも。
そう思ったら気持ちが軽くなって私は自分の事を話した。
「あのね、涼太は私の兄なの。普段は地元にいるんだけど時々仕事の関係で東京に来ることがあるんだ。土曜日も仕事でこっちにいたんだけどついでに私も乗せて帰るって言って迎えに来てくれてたの」
「藤井先輩、お兄さんがいるんですかぁ? でもそれで結城課長が怒るのもおかしいと思いますけど」
「お兄さんだってこと知らなければ誤解するんじゃない? イケメンだし」
たしかに結城課長には兄の存在を話した事がない。
それに涼太はイケメンだと思う。
でもそんな事で不機嫌になるかな……。
「えー、藤井先輩のお兄さんてイケメンなんですかぁ? 」
イケメンという言葉に恵菜ちゃんの目がピカッと光った。
「やっぱり女の私たちが考えてもダメね。こういうのは同じ男に聞いた方がいいのかね〜」
食べるのが早い雅はもうデザートのカスタードプリンに手をつけている。
よく見ると恵菜ちゃんも、キッシュを食べ終えればデザードだけだ。
まだメインのドリアを途中までしか手をつけてない私は2人の話を聞きながらも食べることに集中した。
「これはちゃんと話し合うべきですね! 藤井先輩は遠慮ばかりしてるように見えます! 彼氏なんだからもっと素直になって甘えちゃいましょっ!」
前に雅にも似たような事を言われた気がして、隣にいる雅を見たら「フフッ」と笑って私に相槌を打ってきた。
うん、もっと素直にならなきゃだよね。