上司と私の偽恋愛 ※番外編追加しました※


「あ、すみません。つい……」

「……藤井さんだっけ?」

「あ、はい!」

三井さんは私の顔を見て「ふ〜ん」と言いながら、またパソコンの画面に向かい直して仕事を再開した。


「もっと細かい意識を持った方がいいよ」

「え?」

「藤井さんは良いセンスしてると思うよ。意識が広い事は良いけど、もう少しいろんな角度から考えてデザインしたらいいんじゃない」

「意識を広く細かく……ですか?」

三井さんの難しすぎるアドバイスをまとめてみる。

「そう、まずありとあらゆる情報物から思い描いてデザインする。そこから性別や世代、タイプとかいろんな条件を絞っていけば藤井さんならもっと良いもの作れると思うよ」


三井さんはそこまで言うと「ま、頑張って」と掌をあげてまたパソコン画面に向かい仕事を再開した。

「ありがとうございました!」

一礼した後、私も自分の席へ戻って自分の仕事を再開させた。
三井さんの言ってる事すごく当たってる!
確かに私のデザインは偏りがあるような気がしていた。
もっと細かく丁寧にしてみよう!


そういえば、高校生の頃簡単なアクセサリー入れを作ってもらう為に自分でデザインした事があった。
あの時もお母さんにデザイン画を見せた時表面の膨らみや角の形、底のイメージまで細かく聞かれながら付け足ししていったっけ。

「細かくかぁ」

一番大切であり一番面倒なことでもある。
実は細かい作業が苦手な私は、苦手なりに細かくやってきたつもりだけど三井さんにはバレていたんだ。

痛い所を指摘されたけど私にはとてもありがたい言葉だった。

「もっと細かく!」

画面を見つめながらワクワクしている自分がいてとても新鮮に感じた日だった。

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