秋に、君に恋をする。


 ニャア、と猫の声がした。


「何してんの」


聞き覚えのある、低い声。

またその声が耳にすんなりと入ってきて目を開くと、目の前に彼がいた。


「わっ」

びっくりした。
勇太朗の顔が近くにあったからだ。


「お前、こんなとこで寝てんなよ」

「ごめん、気持ちよかったからつい…」

気づいたら猫は隣にいなくて、勇太朗の肩に乗っていた。


「あ」

「ん?」

「いや、その猫、なついてるね」

「あー、これ俺んちの猫」

「えっそうなの!?」

「覚えてない?小6の夏休みに拾った猫」

「え…ああ!」


そういえば小6の夏休みが終わる頃、いつも遊んでいた川の近くで、仔猫が捨てられていたっけ。
飼い主を探すって言ってたけれど、そっか、勇太朗が飼ったんだ。


「名前、なんていうの?」

「…」

「え、なに?教えてよ」

「………、アキホ」

「あきほ?わ、一文字違いだ。嬉しい」

「秋穂ってあれだぞ、米の事だからな」

勇太朗が何故か顔を真っ赤にして大きな声を出すから、ちょっと小太りの猫のアキホは、とん、と勇太朗の肩から降りた。


「知ってるよー、稲穂の事でしょ。私、勇太朗ほどばかじゃないよ」

「うっせ」

「よくここにいる事わかったね」

「ここ通学路だし」

「あ、学校帰り?そういえば勇太朗制服だ、新鮮」


白いワイシャツに黒のズボン。
きっと、学ランなのかな。似合いそう。

シャツから覗く彼の腕は、がっしりしていて逞しくて、5年前とは大違い。 


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