秋に、君に恋をする。
カブに乗って20分くらい。
小さい頃遊んでいた川は歩いていける距離だったけど、今日釣りをしに行くところはどうやらわりと離れたところにあるようだ。
「けっこう上流の方?」
「わりと。こっちのが静かだし。あ、でも水冷たいから気をつけろよ」
「うん」
勇太朗が言ったとおり周りは木に囲まれていて、川の流れる音だけが聞こえるくらいで、静かなところだった。
「石大きいしゴツゴツだね」
「上流の方だからなー」
「きれいな石ないかなー」
「あー、探せばあるんじゃね」
「よし、釣りの方は任せた」
「なんでだよ」
黙々と作業をする彼の隣で、私は石選びに集中した。
それを見て、釣り竿を立てかけて、勇太朗も石選びを始めた。
「水切りしよ水切り」
「え、水切りー?私あれ苦手」
「大丈夫だって。いい石あるかなー」
ぱっと石を拾って、ぱっと投げて、ばしゃばしゃと石が飛んでいく。
「よっしゃ4回」
「えー、私全然だめだ」
勇太朗が投げる石は全部3回も4回も跳ねるけれど、私の石はそのまま川にどぼん。
「なんでー」
「コツがあるんだよ」
そう言って私の隣にやってきて、石を探す。
「これくらいの丸めで平らな石を、下から、川と平行に投げるんだよ」
勇太朗に腕を掴まれて、そのまま振り回される。
その通りに手を動かして、飛んでった石を目で追うと、1回だけ跳ねて、また川にどぼん。
「あー…」
「はは、進歩したじゃん」
振り向いたら、すぐ隣で、勇太朗が子どものように大きな声をあげて笑っていた。
そしてまた、楽しそうに石選び。
何だか小学生の頃に戻ったようだった。