秋に、君に恋をする。



 バスに乗って、外の景色が変化する。

ちらほらとスーパーなどの建物が現れて、街に近づいていった。

高校前のバス停で降りたら、すぐにコンビニがあって、大通りを挟んでその斜め向かいに高校があった。


コンビニに入って急速充電器とUSBケーブルを買って、コンビニの駐車場にあったベンチに座った。

iPhoneの電源が入って画面が明るくなると、メッセージが2件に増えていた。


ひとつは留守電で、もうひとつは弟からだった。


『今どこにいますか?』

そのメッセージに返信しないで、留守電を聞いた。

機械の女の人の声から、久しぶりに聞く声がした。


母親の声だった。

その瞬間、どきりと胸が鳴った。



もしかして私がいない事に気付いて、心配してくれていたのだろうか。

そんな淡い期待を抱いた。



『あなた今どこにいるの?家にもいないし、学校にも行ってないみたいじゃない。担任の先生から連絡が来て、恥ずかしかったわ。迷惑かけないでちょうだい』


ああ、そうだった。

ばかな事をした。

知っていたはずなのに、完全に諦めきれていないから、たった一瞬で勝手に思い上がって、たった一瞬で勝手に地に落とされた気分になる。


母親の目が、私に向いたわけじゃない。逆に、もっと周りを気にするようになってしまった。

母親の目が、私に向くわけがなかった。


そんな事向こうにいたら、今まで通りの日常だったら、勘違いする事はなかったはずだ。



「勇太朗~」


女の子の声が聞こえた。

女の子だけじゃない。

女の子も男の子も、勇太朗と同じ制服を着たたくさんの人達が、勇太朗の周りを囲んでいた。

その真ん中で勇太朗が、楽しそうに笑っていた。


ただ、それだけの事だ。

それだけの事なのに、なんで私は、こんなに動揺しているんだろう。



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