秋に、君に恋をする。
「あれ、何でここにいんの?」
きょとんとした顔で、彼が私を見る。
無理やり笑顔を作って、小さく手を振った。
勇太朗が駆け寄ってきて、隣を歩き出した。
「どうしたの」
「充電器買いにコンビニにきたの」
「ふーん」
一時間に一本のバスが丁度来て、勇太朗と同じ制服を着た人達と、ぞろぞろとバスに乗る。
また、外の景色が変わって、緑だけになる。
バスの中はいつの間にか私と勇太朗だけになって、バスを降りて、歩き出した。
「あっちーな、今日」
「ねー、焼けるかな」
「…赤くなってる」
「え?」
「肌。焼けると赤くなるタイプだったな」
「あ、うん。そうなの」
ゆっくりと土の道を歩く。
隣にいる彼が、私の歩幅に合わせている事が分かった。
その彼の優しさと、さっきの彼の周りにいた人達を思い出して、何故か、胸が苦しくなった気がした。
まるで勇太朗の私への優しさが、ひとりぼっちの私に対する同情だったのではないかと、嘘だったんじゃないかと、そんな事を思った。
「変わらないね、勇太朗」
「あ?」
「昔から明るくて優しくて、いつも勇太朗の周りには色んな子がいたよね。…勇太朗は、昔の、小学生の頃のままだ」
じりじりと、太陽の光が腕に刺さる。
「…何言ってんの、俺、変わったよ」
真剣な目で、彼は私を見つめた。
「いつまでも、小学生のままなわけないだろ。俺、もう子どもじゃねえよ」
ちがう。
変わったのは勇太朗じゃなくて、私。
勇太朗が色鮮やかで眩しかったのは、昔からずっとそうだった。
勇太朗は昔から、眩しかった。
私が、色褪せて、灰色になっちゃったんだ。
濁って濁って、変わってしまった。
あの濁った世界で、私も、色褪せた。
「…あ」
じりじり、じりじり。
私の肌は、確かに赤くなっていた。
「ごめん、私、先に帰る」
慣れない土の道を、必死で走った。
走って走って、家に駆けこんだ。
台所から、あきはー?と私を呼ぶ祖母の声が聞こえた。
キャリーとリュックを取り出して、散らばっている荷物を投げるようにそこに入れた。
急に走ったから、呼吸は荒れていたし、汗もかいた。
畳に、ぽたりと水滴が垂れて、染みができた。