秋に、君に恋をする。
「勇太朗、今日泊まっていったらどう?」
私と祖母と、勇太朗とおばちゃんと、後から来た勇太朗のお父さんと、5人で食卓を囲んでいる時に祖母が言った。
おばちゃんが、「いいじゃない、そうしたら!」と笑顔で答えた。
「は!?」
勇太朗がお箸から大根の漬物を落とした。
ついでに言うと、勇太朗のお父さんも、お酒をこぼした。
「昔はよく泊まってたじゃない!ね、そうしなさいよ!」
乗り気なおばちゃんに対して、勇太朗は心底嫌そうな顔をしていたけれど、私は本音を言うと少しでも長く一緒にいたかった。
「勇太朗、泊まりなよ」と私が言うと、珍しく「でも…」とか曖昧なはっきりしない返答をしたので、これは押せばいけると思って、どんどん押してみた。
そうしたら勇太朗は渋々「わかった」と呟いて、何故か頬を赤くしているのが見えておかしくて、私は小さく笑った。
帰り際、勇太朗のお父さんが「部屋は別で寝ろよ!」と言って、「うるせえよ!」と顔を真っ赤にして起こる勇太朗と少し言い争いになっていた。
勇太朗の布団は、私が寝ている部屋と反対側にある客間に敷いた。
祖母がすぐに寝て、私も彼に「おやすみ」と言って部屋に入り、布団にもぐった。
だけどなんだか眠れなくて、泣いたから目は重いはずなのに、目を瞑っても、勇太朗の顔が浮かんだ。
起き上がって、ガッと布団一色掴んで、客間まで足を進めた。
暗い客間で、横になりながら携帯を弄っていたから、そこだけ少し明るくなっていた。