秋に、君に恋をする。
3
次の日の朝、目を覚ましたら勇太朗はいなかった。
バイトだし仕方ないか、と思う反面、何だよ起こせよー何も言わないで行くなよ、と不貞腐れそうになった。
台所からいい匂いがしたので、目をこすりながらそこまで行く。
「あら、あきはおはよう」
「おばあちゃんおはよー」
「おーおはよ」
「あ、おはよー…って、え、なんで勇太朗いるの?」
「あ?」
台所から繋がっている茶の間のテレビの前で、胡坐をかきながらNHKを見ていた。
頭もぼさぼさで、目も半開きだったから、寝起きだという事はすぐにわかった。
「バイトは?」
「あー、大丈夫」
「ちょっと答えてよ」
「んー、代わってもらった」
「え?」
彼が小さく言ったのを、聞き逃さなかった。
ちゃんと聞こえたけれど、聞き間違いかと思った。
「なんで?あんなにバイト命だったのに」
「いや別にそんなんじゃないけど…」
「体調悪いの?大丈夫?」
「はー、お前ってほんと鈍すぎ」
「は」
「ご飯食ったら準備しろよ。行くんだろコスモス祭り」
開いた口が塞がらないとは、まさしく今の私のような状態を言うんだと思った。
あんなにお金が欲しい為にバイトをしていた彼が、コスモス祭りに行くためにバイトを休んだ。
コスモス祭りの為なんじゃなくて、私の為だと思ってもいいのかな、と少し自惚れてみた。