秋に、君に恋をする。
お昼を過ぎて、祖母の家を出た。
バス停までの道を、勇太朗と歩いた。
勇太朗がキャリーを持っていてくれて、ごろごろがたんっごろごろ…と、来る時の私よりも乱暴な音が聞こえた。
大丈夫か、壊すなよ。
「稲、きれいだね。こんな金色みたいな田んぼ初めて見た」
「それしかねえもん」
「いつも買い物行く時は街に出るんだ?」
「うん」
「お医者さんっているの?」
「昔はいたらしいけど、今は街に行かないといないな」
「ふーん」
ごろごろ、ごろごろ。
「私、ここに来てよかったよ」
「こんなど田舎だけどな」
「いいところだよ。勇太朗だって知ってるでしょ」
「…まあ」
「世界が180度変わった感じ」
「そ」
ごろごろごろごろ。
その音が、止まった。
「勇太朗」
バス停について、勇太朗が立ち止って、少し後ろにいる私の方に振り向いた。
「どした?」
「昨日は本当にありがとう」
「おー」
「また、おばあちゃんに会いに来るね。あ、おばちゃんにも」
「うん、二人とも喜ぶよ」
「だから、勇太朗にも、会いに来てもいいかな。…また、会いに来たい」
ぽかんと、勇太朗が口を開けたまま私を見つめていた。
「……え、ちょっと待って、待って、いやわかってる大丈夫、お前にそういう気がないのはわかってる」
「え?」
「待って俺今、本当に勘違いしそうでやばいから。落ち着かせて」
顔を真っ赤にして、きょどって、そんな彼の姿を初めて見た。
「待って、勘違いってなに、今の私の精一杯の告白を…」
「は!?え、告白?」
「そ、そうです」
「まじで…」
さっきまできょどっていたと思ったら急に肩の力が抜けたように、キャリーがばたんと倒れた。
「……昨日、勇太朗私にたくさん言ってくれたよね。私も、勇太朗に会いたくて仕方なかった。5年振りに勇太朗に会って、心臓飛び出るかと思ったのは、私の方だよ。身長も高くなって身体もがっしりして筋肉もついて声も低くなって、男の人になってて、緊張したしどきどきした」
身体が熱くなるのを感じた。
太陽のじりじりだけじゃない。
心臓が、ばくばくして破裂しそうだった。