秋に、君に恋をする。
「よし、行ってこい」
優しい笑顔で、そう言って、大きな口を開けて笑った。
「うん、行ってきます」
元の生活に戻ったって何かが変わっているわけじゃないけれど、でもひとりじゃないと言ってくれる人がいる。
それを知っただけで、私はもう少しだけ頑張ろうと思えた。
支えてあげたいとか、守ってあげたいと思う人がいる。
支えてあげたいとか、守ってあげたいと思える人がいる。
大丈夫、ひとりじゃない。
ひとりじゃないと思ったら、東京にいる私も好きになれる気がした。
でも本当は東京とか田舎なんて事は関係なくて、勇太朗も祖母も勇太朗んちのおばちゃんも、私を受け入れてくれる人がいる。
それを知って、私は、私という人間を知った。
誰かに支えられて、守られて、好きになって、その人を支えて、守りたいと思う。
泣きたいときはそばに行きたいし、その人が悲しいときは、力強く抱きしめてあげたいと思う。
嬉しいときには優しく笑ってほしいし、私も優しく笑いたいと思う。
時間はかかるかもしれないけれど、母と父と弟とも、そうなれるかな。
なれたらいいし、なりたいと思う。
駅まで1時間バスに乗って、電車に乗って1時間。
そこから1時間半新幹線に乗る。
帰ったら、怒られるかな。
呆れた顔をされるかな。
「ただいま」って言えたらいいな。
それで、「おかえり」って言ってもらえたら、嬉しくて泣きそうになるかも。
そしたら、お世話になった祖母にお礼の電話をしよう。
あ、ついでに勇太朗にも、電話してやろう。
そしたらきっと、「ふーん」て興味なさそうな声を出して、でも電話の向こうでは、彼も嬉しそうに笑ってくれているんだろうな。
2019.1.30 end