秋に、君に恋をする。
「これ!超美味しい」
「えー俺ニラの薄焼きキライ」
「ニラ!?」
「ニラなんてそこら辺に生えてるだろ」
「そうなの!?」
「…お前昔から食ってるじゃん」
「え、そうだっけ」
そういえばここによく来ていた頃は、いつも祖母が作る料理を「美味しい」って言いながら食べていたはずなのに。
なのにどうして忘れていたんだろう。
ここで食べていた料理も、味も、この景色も、太陽の光も、縁側から聞こえる軽トラの音も、夜の静けさも、夜空に見える星も、この空気も、青い色をした空も、全部全部全部。
あの色褪せた世界に囚われて、いつの間にかこの世界は、私にとって本当に『夢の世界』になってしまっていた。
「…明後日は」
「え?」
「明後日、俺、バイト休みだけど」
「そうなんだ」
「……」
「え?」
おばちゃんが、くすくすと笑って、「あはははは!」とその笑い声が大きくなっていくにつれて勇太朗の顔が赤くなっていった。
「え?なに?」
「あきはちゃん、明後日暇だったら、勇太朗と遊んであげて」
「え…あっ、ああ!うん、全然暇!」
勇太朗の言いたい事がやっとわかって、私は何度も頷いた。
「えー、楽しみだなあ。どこ行く?」
「俺は別にどこでもいいです」
「えー、じゃあねえ、あ、川行って釣りしたいなあ」
「あー…夏休み死ぬほどやった…」
「えー、じゃあやめよっか…」
「いいよ別に。川な、川」
「あ、コスモス祭りも行きたい」
「えっ、やだよ。つまんねえ」
「えー、行こうよ。私いつもコスモス祭り始まる前に帰ってたから、行った事ないんだよね」
「えー」
「お願い」
結局私の粘り勝ち。
土曜日は1日釣りをして、日曜日は勇太朗が文化祭準備で学校へ行く為、それが終わる昼過ぎ頃にコスモス祭りに行く予定となった。
ちなみに月曜日は、勇太朗はバイトがあるそうなので、帰る時はいないそうだ。