時の欠片
花屋の中に備え付けられている扉を開けると僕の住んでいる家へと繋がる。
僕は美歩さんは家の中に入るように促すとリビングのソファーに座っているように言ってホットココアを作るためにキッチンへ行った。
リビングからは美歩さんの嗚咽が聞こえてくる。
桜のために誰かが涙を流す度に心臓が締め付けられた。呼吸が上手く出来なくて凄く苦しい。
カチャカチャとコップとスプーンのぶつかる音が耳に届く。
砂糖を入れるか悩んだけれど美歩さんはブラックコーヒーが好きなのを思い出していた入れるのをやめた。桜に作る時はいつも砂糖を多めに入れていたからなんだか砂糖を入れていないことが凄く心許なく感じる。
リビングに戻ってテッシュが空になりかけて居るのを確認し、ココアを渡してから新しいティッシュを用意した。
「ありがとう、、」
「いいえ。秋月さんに連絡しておきましたから。」
「……うん。」
シーンとした部屋の中でボク達は何をするでもなく黙る。
二人きりで話したことなんて初めてで少し戸惑っているのもあった。何時もは絶対に桜が隣にいたから。
そうして、美歩さんと僕の様子を気にかけつつ話題を振ってくれていた。
そんな些細な気遣いさえ今まではあまり気にもとめていなかった。それが彼女だったから。彼女は本当に素敵な人だった。
亡くなってから気づくなんて…。
SNS等でよく流れているポエミーなセリフ。
【人というのは無くなってから大切さに気づくんだ。】
今まではふーんって流していたその言葉が存外的を得ているのだと気付かされる。
湯気を立てていたココアはすっかり温くなってしまった。
「私、桜のこと昔は嫌いだった。憎く思ったこともあるし居なくなれって思ったこともある。」
「……そうなんですか。」
それはそうだろうな、と思った。
二人の関係性を垣間見ればそうなっても仕方ないと思うからだ。
「でも、色々あって仲良くしてみたら桜のこと大好きになった。妹みたいに大切にしてた。田中くんとのことも凄く楽しみにしてた。」
「僕は大丈夫ですよ。」
何度目かの言葉。
独りよがりな言葉。
美歩さんの気持ちを否定する言葉。
「……便利な言葉ね、それ。」
彼女はカップを置くとおもむろに立ち上がって出口へ向かう。
僕はそれを止めなかった。
僕は美歩さんは家の中に入るように促すとリビングのソファーに座っているように言ってホットココアを作るためにキッチンへ行った。
リビングからは美歩さんの嗚咽が聞こえてくる。
桜のために誰かが涙を流す度に心臓が締め付けられた。呼吸が上手く出来なくて凄く苦しい。
カチャカチャとコップとスプーンのぶつかる音が耳に届く。
砂糖を入れるか悩んだけれど美歩さんはブラックコーヒーが好きなのを思い出していた入れるのをやめた。桜に作る時はいつも砂糖を多めに入れていたからなんだか砂糖を入れていないことが凄く心許なく感じる。
リビングに戻ってテッシュが空になりかけて居るのを確認し、ココアを渡してから新しいティッシュを用意した。
「ありがとう、、」
「いいえ。秋月さんに連絡しておきましたから。」
「……うん。」
シーンとした部屋の中でボク達は何をするでもなく黙る。
二人きりで話したことなんて初めてで少し戸惑っているのもあった。何時もは絶対に桜が隣にいたから。
そうして、美歩さんと僕の様子を気にかけつつ話題を振ってくれていた。
そんな些細な気遣いさえ今まではあまり気にもとめていなかった。それが彼女だったから。彼女は本当に素敵な人だった。
亡くなってから気づくなんて…。
SNS等でよく流れているポエミーなセリフ。
【人というのは無くなってから大切さに気づくんだ。】
今まではふーんって流していたその言葉が存外的を得ているのだと気付かされる。
湯気を立てていたココアはすっかり温くなってしまった。
「私、桜のこと昔は嫌いだった。憎く思ったこともあるし居なくなれって思ったこともある。」
「……そうなんですか。」
それはそうだろうな、と思った。
二人の関係性を垣間見ればそうなっても仕方ないと思うからだ。
「でも、色々あって仲良くしてみたら桜のこと大好きになった。妹みたいに大切にしてた。田中くんとのことも凄く楽しみにしてた。」
「僕は大丈夫ですよ。」
何度目かの言葉。
独りよがりな言葉。
美歩さんの気持ちを否定する言葉。
「……便利な言葉ね、それ。」
彼女はカップを置くとおもむろに立ち上がって出口へ向かう。
僕はそれを止めなかった。