突然ですが、兄貴が出来ました!
そして玄関に取り残されたのは…、俺と蒼ちゃんの友達と二人。
気まずい空気が流れている沈黙を破ったのは、蒼ちゃんの友達だった。
「あの…ごめんね。大丈夫?」
ハンカチを差し出されて聞かれ、俺は綺麗にアイロン掛けされたハンカチを奪い取る。
俺がギっとそいつを睨むと
「でも、君が抱き付いて来たのが原因だから…お互い様という事で…」
と、困った顔で呟かれた。
「確かに…」
一瞬納得しかけて、ハッと我に返る。
「確かに抱き付いたのは悪かったけど…、俺、ファーストキスだったんだからな!」
叫んだ俺に、そいつはびっくりした顔で俺を見てから少し悩んだ顔をすると
「分かった。じゃあ、責任を取るよ」
と、真剣な顔で言われた。
「責任?どうやって?」
疑いの眼差しを向ける俺に
「きみさえ良ければ、お付き合しても良い」
と、真顔で言われる。
「お付き合い?お付き合いって、何処に付き合わせるつもりなんだよ!」
怒った顔で返した俺に、そいつはポカンっとした顔をした後
「あ·····いや、そうじゃなくて·····。恋人になるって言ってるんだけど·····」
困ったような顔で呟いた。
(恋人?)
俺もそいつの真意が理解出来ず、一瞬ポカンっとそいつの顔を見てしまった。
が、困ったような戸惑うような顔で俺を見つめるそいつの言葉の意味を時間差で理解し、
「はぁ?何で俺があんたと付き合わなくちゃいけないんだよ!大体、男同士でどうやって付き合うんだよ!」
思わず叫んでいた。
するとそいつは目を見開いて
「え!君、男の子なの?」
って、心底驚いた顔で言ったのだ。
(顔はお袋似で、良く女の子に間違えられるけど…)
そいつの言葉にワナワナと震える俺を、そいつは頭の先からつま先までジッと俺を見つめては「?」という顔をしていやがる。
「俺の何処をどう見たら、女の子だって言うんだよ!」
地団駄踏んで叫ぶ俺に、「あ!」という顔をしたかと思えば
「え?じゃあ、変声期前?小学生だったの?」
と、真顔で言いやがった。
余りにも失礼な発言の連続に、俺の堪忍袋の緒がぶちっと音を立てて切れた!
「ふざけんな!
俺はれっきとした中学二年の男だよ!」
俺はそいつの手を取って、自分の股間にそいつの手を当てた。俺の行動にびっくりしたらしく、そいつは触らされた手と俺の顔を交互に見ている。
「どうだ!わかったか!」
ふんぞり返った俺に、そいつは突然吹き出すと大笑いし出した。
「な!なんだよ」
驚く俺に
「嫌…、男を証明させるのに、まさか握らせるとは思わなくて…」
思い出して再び笑い出す。
その時、蒼ちゃんがやっと戻って来た。
「ん?和解出来たの?」
爆笑してるそいつは蒼ちゃんに
「お前の弟、面白いな」
そう言ってお腹を抱えて笑っている。
すると蒼ちゃんは小首を傾げて
「翔、この子は俺の弟じゃないよ。
この子は幼馴染なんだ」
そう言って俺の頭を優しく撫でた。
「それからあ~ちゃん、いつも言ってるでだろう?相手を確かめて抱き付かないから、こんな事になるんだよ」
蒼ちゃんは俺に視線を移すと、軽く叱る言い方で注意をした。
蒼ちゃんの言葉に頬を膨らませていると視線を感じて、俺は視線の主をチラ見した。
するとそいつ、俺の顔を見てずっと笑いを堪えていやがった!
(む…ムカつく!)
俺は頬を益々膨らませた後、そいつに思い切り「あかんべー」をしてやった。
「あ~ちゃん!」
俺の行動に蒼ちゃんが叫ぶと同時に、そいつが再び吹き出して大爆笑していたのは言うまでもない。
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