突然ですが、兄貴が出来ました!
初対面の印象は最悪だった。
その後、そいつは毎週金曜日に蒼ちゃんの家に泊まりに来るようになったので、嫌でも名前を覚えてしまった。
『秋月 翔』
家族が仕事で忙しいらしく、家に一人でいる事が多いと聞いて、蒼ちゃんが週末だけ家に泊めているらしい。
蒼ちゃんのお母さんは、毎日蒼ちゃんを学校まで送迎して貰っているので大歓迎で翔さんを泊めている。章三の奴も、いつの間にかゲーム仲間としてすっかり仲良くなっていた。俺は自分の居場所を取られたみたいで、正直、面白くなかった。
そんな俺が秋月先輩を意識し出したのは、その年の文化祭が終わった日の事だった。
いつも一緒に帰っている章三が部活の関係で一緒に帰宅出来なくなり、俺は一人で暗い夜道を歩いていた。
章三は蒼ちゃんに連絡して、秋月先輩が泊まりに来てるから迎えに来てもらえと言っていたが…、俺は直接親しいわけでは無いので連絡せずに帰宅してしまったのだ。
俺が一人で帰宅していると、何やら後ろを着けられているような気がしていた。
自宅まで着いてこられるのも厄介だと思い、ちょっと遠回りをして巻こうとした時、肩を掴まれる。
「お嬢ちゃん、一人?」
学ラン着てるのに、毎回、女の子に間違われる。
「俺は男だよ!」
って叫ぼうとした瞬間
「何をしている?」
と、低くて明らかに怒っている声が聞こえた。聞きなれない声に驚いて振り向くと、俺に声を掛けて来た男が道路にひっくり返っている。倒れた男が慌てて逃げて行くのを見ていると
「大丈夫?」
先輩の手が優しく俺の頭を撫でた。
その瞬間、胸がドクリと高鳴る。
「え?翔さん?何で?」
目を丸くしていると
「あ~ちゃん!大丈夫?」
蒼ちゃんが駆け着け、抱き付いて来た。
「あ、うん。
翔さんが助けてくれたから大丈夫」
笑顔で答えた俺に、
「あ~ちゃん、夜道は一人で歩いちゃダメって言ってるだろう!」
心配して怒る蒼ちゃんに
「まぁまぁ、無事だったから良いじゃないか」
と苦笑して翔さんが蒼ちゃんに言うと、蒼ちゃんはキっと翔さんを睨んで
「大体、翔がとっとと迎えに行かないのが悪い!」
と、無茶苦茶な事を言い出した。
「蒼ちゃん…、それ無茶苦茶な事言ってるよ」
苦笑いして言う俺に、蒼ちゃんは俺をギュッと抱き締めて
「あ~ちゃんに何かあったら、僕は自分が許せなくなる」
そう呟いた。
蒼ちゃんは自分が辛い思いをしている分、俺に同じ思いをさせまいとずっと心配してくれている。
俺はそんな蒼ちゃんが大好きだった。
でも、いつの間にか視線は蒼ちゃんの隣で微笑む翔さんに向いている事に気付いた。
俺を抱き締める蒼ちゃんを、優しい眼差しで見つめる翔さんに胸が痛くなる。
でも、俺は翔さんの事を何も知らない。
知っているのは、蒼ちゃんの親友である事。
自宅ではいつも一人で過ごしている事。
毎週金曜日に、蒼ちゃんの家に泊まって居る事。
一度だけ、翔さんが泊まる日に章三の部屋に泊まった事があった。
蒼ちゃんと翔さんは文化祭の準備をしていて、蒼ちゃんの部屋に籠って準備をしていた。
丁度、章三がお風呂に入っていて、俺は章三の部屋で漫画を読んでいた。
その時、突然隣の部屋から物凄い物音が聞こえた。
慌てて蒼ちゃんの部屋のドアを開けた俺の目飛び込んで来たのは、蒼ちゃんが翔さんに馬乗りになって翔さんのシャツを脱がそうとしている光景だった。
蒼ちゃんの上着も前ボタンが全開で、先輩のシャツを蒼ちゃんが脱がそうとしているとしか思えなかった。
「あ…ごめんなさい!」
慌ててドアを閉めた俺に
「違う!あ~ちゃん、誤解だから!」
「違う!葵君、誤解だ!」
叫ぶ二人の声が背後に聞こえる。
この時、俺の胸がズキリと軋むように痛んだ。
何でこんなに痛むんだろう?
でも、自分の気持ちを認めたくなくて、ずっと気付かないフリをしていた。
その後、そいつは毎週金曜日に蒼ちゃんの家に泊まりに来るようになったので、嫌でも名前を覚えてしまった。
『秋月 翔』
家族が仕事で忙しいらしく、家に一人でいる事が多いと聞いて、蒼ちゃんが週末だけ家に泊めているらしい。
蒼ちゃんのお母さんは、毎日蒼ちゃんを学校まで送迎して貰っているので大歓迎で翔さんを泊めている。章三の奴も、いつの間にかゲーム仲間としてすっかり仲良くなっていた。俺は自分の居場所を取られたみたいで、正直、面白くなかった。
そんな俺が秋月先輩を意識し出したのは、その年の文化祭が終わった日の事だった。
いつも一緒に帰っている章三が部活の関係で一緒に帰宅出来なくなり、俺は一人で暗い夜道を歩いていた。
章三は蒼ちゃんに連絡して、秋月先輩が泊まりに来てるから迎えに来てもらえと言っていたが…、俺は直接親しいわけでは無いので連絡せずに帰宅してしまったのだ。
俺が一人で帰宅していると、何やら後ろを着けられているような気がしていた。
自宅まで着いてこられるのも厄介だと思い、ちょっと遠回りをして巻こうとした時、肩を掴まれる。
「お嬢ちゃん、一人?」
学ラン着てるのに、毎回、女の子に間違われる。
「俺は男だよ!」
って叫ぼうとした瞬間
「何をしている?」
と、低くて明らかに怒っている声が聞こえた。聞きなれない声に驚いて振り向くと、俺に声を掛けて来た男が道路にひっくり返っている。倒れた男が慌てて逃げて行くのを見ていると
「大丈夫?」
先輩の手が優しく俺の頭を撫でた。
その瞬間、胸がドクリと高鳴る。
「え?翔さん?何で?」
目を丸くしていると
「あ~ちゃん!大丈夫?」
蒼ちゃんが駆け着け、抱き付いて来た。
「あ、うん。
翔さんが助けてくれたから大丈夫」
笑顔で答えた俺に、
「あ~ちゃん、夜道は一人で歩いちゃダメって言ってるだろう!」
心配して怒る蒼ちゃんに
「まぁまぁ、無事だったから良いじゃないか」
と苦笑して翔さんが蒼ちゃんに言うと、蒼ちゃんはキっと翔さんを睨んで
「大体、翔がとっとと迎えに行かないのが悪い!」
と、無茶苦茶な事を言い出した。
「蒼ちゃん…、それ無茶苦茶な事言ってるよ」
苦笑いして言う俺に、蒼ちゃんは俺をギュッと抱き締めて
「あ~ちゃんに何かあったら、僕は自分が許せなくなる」
そう呟いた。
蒼ちゃんは自分が辛い思いをしている分、俺に同じ思いをさせまいとずっと心配してくれている。
俺はそんな蒼ちゃんが大好きだった。
でも、いつの間にか視線は蒼ちゃんの隣で微笑む翔さんに向いている事に気付いた。
俺を抱き締める蒼ちゃんを、優しい眼差しで見つめる翔さんに胸が痛くなる。
でも、俺は翔さんの事を何も知らない。
知っているのは、蒼ちゃんの親友である事。
自宅ではいつも一人で過ごしている事。
毎週金曜日に、蒼ちゃんの家に泊まって居る事。
一度だけ、翔さんが泊まる日に章三の部屋に泊まった事があった。
蒼ちゃんと翔さんは文化祭の準備をしていて、蒼ちゃんの部屋に籠って準備をしていた。
丁度、章三がお風呂に入っていて、俺は章三の部屋で漫画を読んでいた。
その時、突然隣の部屋から物凄い物音が聞こえた。
慌てて蒼ちゃんの部屋のドアを開けた俺の目飛び込んで来たのは、蒼ちゃんが翔さんに馬乗りになって翔さんのシャツを脱がそうとしている光景だった。
蒼ちゃんの上着も前ボタンが全開で、先輩のシャツを蒼ちゃんが脱がそうとしているとしか思えなかった。
「あ…ごめんなさい!」
慌ててドアを閉めた俺に
「違う!あ~ちゃん、誤解だから!」
「違う!葵君、誤解だ!」
叫ぶ二人の声が背後に聞こえる。
この時、俺の胸がズキリと軋むように痛んだ。
何でこんなに痛むんだろう?
でも、自分の気持ちを認めたくなくて、ずっと気付かないフリをしていた。