ヴァンパイア夜曲

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「わぁ…っ!すごい人だね…!」


やがて、日が落ちかけた午後6時。

日没前になんとかサザラントの街に辿り着いた私たちは、街の門をくぐって目を輝かせていた。


「こんなに人がいっぱいいるところなんて初めて来たわ…!見たことのない食べ物もあんなにたくさんある…!」


「さすが国一栄えている都市なだけあるね。美人もいっぱいいそうだ。」


「…おい。お前ら、はぐれんなよ。」


わくわくが止まらない私とランディを軽く睨み飛ばしたシドは、街の中心部にそびえ立つ建物へ視線を向けた。


「…あれがノスフェラトゥの本部か。…国中から集まったヴァンパイアの組織なんて、迂闊に近寄ったら噛み付かれそうだな。」


シドの言葉に顔を上げると、そこにはクラシックな雰囲気の大きな建物がそびえ立っていた。

塀に囲まれた敷地内は全て本部のもののようで、訓練中らしき団員たちが見える。

戦闘能力が高いヴァンパイアだけが集まった実力主義の軍隊、“ノスフェラトゥ”。きっと、本拠地があるこの街のどこかに“兄”がいるはずだ。


「とりあえず調査は明日からにして、今日は夜になる前に宿へ向かおうか。旅の疲れを癒さないとね。…ここは観光地としても栄えているし、“温泉”が有名らしいよ。」


ランディの言葉に、ぱぁっ!と笑みがこぼれる。

ずっと豪雪地帯の山奥で暮らしてきた私にとって“温泉”は見るのも入るのも初めてだ。

朗報に、つい浮かれていると、ポン、と私の頭を撫でたシドが、ふっ、と吹き出した。


「はしゃぐのもいいけど、風呂で泳いだりすんじゃねーぞ。」


「…!」

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