ヴァンパイア夜曲
無言の肯定にくすり、と、笑ったランディは、からかうように呟いた。
「確かに、あんな美人にねだられたら断れないよね。…はぁ。まったく、シド達が夜な夜な抱き合っている間、どれだけ僕が空気のごとく息を殺して気を使っていると思ってるんだい?」
「……紛らわしい言い方をするな。」
その時、シドがわずかにまつ毛を伏せた。
数秒の沈黙の後、少し低いシドの声が響く。
「…してない…」
「ん?」
「最近はしてない。」
きょとん、と目を丸くするランディ。
視線をわずかに下げたシドは、ぼそり、と呟いた。
「レイシアが、“今日は大丈夫”と断ってくるようになった。…理由は知らねえが。」
この人、ちょっとだけ落ち込んでる…?と、そんなことを思ったランディだったが、口にすると殺し屋の目で睨まれそうだ。
「へぇ。他に血をくれる男でも出来たんじゃない?」
バシャァン!!!!
突然、足を滑らせて沈むシド。
よく出来たコントのようなリアクションに、ランディはつい吹き出した。ケタケタと笑った彼は、予想以上に楽しいおもちゃを見つけたように腹を抱える。
「あはは!冗談だよ!」
「……てめぇ……」