ヴァンパイア夜曲

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“ーー団長なら、この時間は別館の自室にいるはずよ。”


運良く探し人の部下に出会えたシドは、彼女の案内通り、“別館”と呼ばれる屋敷を歩いていた。

どうやらここはノスフェラトゥの幹部が住まう建物のようで、一般団員の宿舎とは設備がまるで違っている。

クラシックな雰囲気の別館は、まるで古びた洋館。いかにも“ヴァンパイアの住処”といった感じだ。


(…それにしても、あの“医者”。ノスフェラトゥの幹部だったのか。)


カナリックの地下水路で、スティグマに堕ちかけていたランディを救った青年。フードのせいで顔立ちはよく見えなかったが、声や仕草から少し歳上くらいの若い印象を受けた。

それが、実力主義の軍隊を率いる団長だったとは。


ーーコツ。


ピアスを握り締め、ある部屋の前で立ち止まる。そこは、部下を名乗る彼女に教えてもらった医者の部屋だった。

コンコン、と数回ノックするが、返事はない。


(…?不在か…?それとも、寝てやがるのか…?)


ドアノブに手をかけると、抵抗なく回る。鍵はかかっていないようだ。


ーーギィ…


古びた扉の軋む音が響く。

もうここまで来たのだ。不法侵入も怖くない。

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