ヴァンパイア夜曲
数秒の沈黙の後、ふっ、と微笑む青年。
吸い込まれるような強い引力を宿したグレーの瞳が、シドを映す。
「…君に興味が湧いたんだよ。…カナリックで出会った夜、地上に転がってたスティグマを仕留めたのは君だろ?“一発も逸らさず全弾命中”。しかも、その全てが確実に心臓を撃ち抜いていた。……話には聞いたことがある。グリムリーパーと呼ばれるスティグマ専門の殺し屋がいると。」
「…。」
「ふっ。そんなに警戒するなって。少し話をしよう。」
青年は、無言で目を細めるシドを見下ろすと、艶のある声で言葉を紡いだ。
「ーーまずは名乗らないとね。俺の名前は“ルヴァーノ”。ノスフェラトゥの幹部さ。…君の名前は?」
「……シドだ。」
短く返された答えに「睨むなよ。」と苦笑したルヴァーノ。
何となく大人びて見える彼は、案外フランクらしい。
「…お前、医者じゃなかったのか?」
そう尋ねたシドに、ルヴァーノは「あぁ。」と、口を開いた。
「もちろん、免許はあるよ。ノスフェラトゥは怪我人が多く出るからね。…まぁ、治療や診察もたまにはするけど、医者としての今の俺の仕事は主に“薬の研究”だな。」
「“薬”…?」
ふと、部屋を見渡してみると、見慣れないビーカーやフラスコなどが机に置かれ、棚には様々な薬草や液体が綺麗に並べられている。
そういえば、ランディに打った薬も彼が調合したと言っていた。
どうやら、医者は彼にとって“副業”らしい。