ヴァンパイア夜曲
思わずツカツカ歩み寄ってベンチで休憩していた様子の彼の前に立つと、シドは私を見るなり、はっ!と目を見開いて硬直した。
「こんなところで何してるの、シド。」
「っ、お前ら、なんでここに…!」
まるで浮気現場を直撃したかのような会話。
シドは全く悪いことなどしていないのだが。
すると、彼は視線を逸らしてぼそり、と答える。
「ノスフェラトゥに行ってきたんだよ。話をしたい男がいてな。」
「えっ!!」
「…そういや、お前の兄貴のことを聞き忘れた。」
(本当に、この男は…!)
私の旅の目的が、頭から全て飛んでいたらしい。ノスフェラトゥに行くなら、一緒に連れて行ってくれればよかったのに。
思わず彼を睨み付けると、ひょい、と紙袋の中を覗いたランディが、驚いたように目を丸くする。
「チョコレートにビスケットにキャンディ…何コレ、まさか全部“お菓子”かい?」
「…おい、勝手にあさるな。」