ヴァンパイア夜曲

想像していなかった答え。


ーーありえない。

あの、シドが。

修道院時代、私がお菓子を食べているだけで睨んできたようなシドが。


“…んなわけねえだろ。これは“俺”のだ。”


「…シド、どうしたの?壊れるほど疲れてる?」


「は?」


「だって、おかしいじゃない。甘いものが嫌いなシドが、こんなにたくさんお菓子を食べようとするなんて。」


まさか、旅を始めて糖分の素晴らしさに気づいたか?

いや、シドは私と出会う前から旅をしていた。それはない。

じゃあ、私が食べているところを見て自分も食べたくなったとか?

…違う。いくら無駄なコミュニケーションをとりたがらない、クールで一匹狼なシドといえど、本性は俺様暴君。欲しいと思ったらその時に言っているはずだ。

思わず眉をひそめたその時、シドが手に持っていたカップが目に入る。

ホイップクリームたっぷりのキャラメルフラペチーノ。

おまけにアーモンドスライスにマシュマロ、チョコソースまでかかっている。

もはや“末期”だ。


(…実は甘いものを好きなことが恥ずかしくて隠してたとか…?まさか、この男。今までも一人の時にこうやってこっそり食べてたのかしら。)

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