ヴァンパイア夜曲
…と、噛み合わない会話にお互い眉を寄せた
その時だった。
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
「「「?!」」」
突然、広場にけたたましいサイレンが響き渡った。
血相を変えて逃げていく人々。
状況を掴めない私たちだけが取り残される。
『出たぞ!スティグマだ!!』
そんな誰かの声が聞こえたのは、シドがベンチを立った直後だった。
はっ!として声の方へ視線をやると、壊された建物の土埃に包まれて赤い瞳がギロリと剥かれるのが見える。
(“スティグマ”?!こんな真昼間に…?!)
思わず目を疑うが、立ち止まっている場合ではない。
即座に戦闘モードに入るシドとランディ。
胸元に忍ばせていた銀の拳銃と、腰に下げていたレイピアがキラリ、と光を反射する。
ーードサドサ!!
ベンチに置かれた紙袋から大量のお菓子が落ちるのも気に留めず、シドは先陣を切ってスティグマへと駆け出した。
『グァァァッ!!』
自我を失って叫び出すスティグマ。
銃と剣に次々と仕留められていくが、敵はざっと50。広場を埋めつくさんとする規模に、ぞくり、と震える。
とても、二人でどうにかできる数ではない。
「レイシアちゃん!君は身を守れるように広場から離れて!」
「!うん…っ!」
流れるように剣を振るうランディに短く指示を飛ばされ、素早く頷く。
私がここに残っても、足手まといだ。
…と、私が市街に向かって駆け出そうとした、次の瞬間だった。
「ーーったく。俺の“縄張り”で暴れるなんて、随分行儀の悪いスティグマだな。」
(え…?)
どこか“聞き覚えのある声”。
視界に映るのは、白い軍服と“ノスフェラトゥ”の腕章。
トッ!と、地面を蹴って一瞬すれ違った“青年”に、はっ、と足が止まる。