ヴァンパイア夜曲


(ベイリーン家の襲撃から姿をくらませていたようだけど…、まさか、この街に潜んでいたなんて…!)


『…“純血”…欲しいなあ…』


不気味に響くローガスの声。

何かに取り憑かれたような口調に、恐怖で足が動かない。

私を抱きかかえたまま戦闘態勢になったエリザが瞳を深紅に染めた瞬間。ローガスは勢いよく地面を蹴ってこちらに飛びかかった。


ーーパァン!!


(!)


避けようと姿勢を屈めたその時、一発の弾丸がローガスを撃ち抜いた。

煙を吐く銃口を構えているのはシド。

しかし、胸を打たれたはずのローガスは、おぼつかない足取りのまま、ぐらり、と立ち上がる。


「っ!」


一同が目を見開いたその時、ルヴァーノの冷静な声が耳に届く。


「一発打ち込んだところでローガスには無意味だ。奴は“自我を持ったスティグマ”。あまたの純血を飲んだせいで、再生能力も桁違い。…死ぬまで殺らないと、“餌”にされるぞ…!」


…と、次の瞬間。

勢いよく地面を蹴ったルヴァーノが、拳を振り上げローガスとの距離を詰めた。

その一撃をかわそうと私を標的から外したローガスは、風のように広場から逃げていく。


「エリザ!来い!」


「!」


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