ヴァンパイア夜曲

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「“お見舞い品”?!これ、全部…?!!」


宿屋の前に留まっていたのは“3トントラック”。積み込まれている食材や花、その他諸々の衣類などの品を見て唖然とする私。

ダンボールに書かれた送り主の住所は“ノスフェラトゥ”だ。

荷物を覗き込んだランディが、ふと一枚の紙を手に取る。


「ええっと。“おはよう、レイシア。よく眠れたかい?腕の傷は平気?昨日はごめんね。お兄ちゃんの調合した薬を入れておくよ。”……これ、全部ルヴァーノさんからだ。すごいね、まだ続きがあるよ。“天使のように可愛い妹に何を贈ろうか悩んだんだけど、結局、全部送ってしまって…”」


「ランディ。それより先は読まなくていいわ。なんとなくわかるから。」


荷物に同封されていた私宛ての長文の手紙。

どうやら、兄にはノスフェラトゥの幹部となって使い道もなく貯めていた巨額の資産があるらしい。しかも副業は医者だ。

…だが、こんな贈り物をポン、と手配するなんて誰が想像していただろうか。しつこいほど愛が溢れている。

ドン引きのシドは、冷めた瞳で言い放つ。


「薬以外は、今すぐ市場に売り飛ばして金にかえるぞ。こんな大荷物持って旅に出れるか。」


「容赦ないねえ…」


苦笑するランディ。すると、彼はふとある“封筒”を手に取りシドへ差し出す。


「シド宛ての荷物もあるみたいだよ?」


「…あ?」

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