ヴァンパイア夜曲
封を切った中から、ひらり、と出てきたのは一枚の手紙。私宛ての何枚もの手紙とは違い、したためられていたのは一文だけだ。
だが、覗き込んだ旅仲間の二人は同時に顔をしかめる。
“手を出したら噛み殺す”
「…あのシスコンヴァンパイア…」
「…無駄に達筆だねえ…」
目的語がなくともわかる威嚇文。
眉をひそめた彼らに「なんて書いてあったの?」と尋ねるが、シドは「気にするな。呪いの羅列だ。」と手紙をぐしゃりと握りつぶした。
…と、その時。さらに同封されていたものを見た瞬間、シドの顔つきは一変する。
ーー封筒に入っていたのは、一枚の“地図”だった。
そこに描かれているのは、私たちが元々使っていた国地図に載っていない道。その先には“樹海”がある。
真剣な瞳のランディが、ぽつり、とシドに尋ねた。
「ここに載っているバツ印は、ローガスの居城かい…?」
「あぁ。ルヴァーノが書き足したんだろ。…あいつ、わざわざ俺に送ってくるなんて。」
旅の目的地が記された新たな地図に、ぞくり、と震えた。
ついに、追い続けていた男の住処が掴めたのだ。