ヴァンパイア夜曲
第4章*ゴーストタウンと婚約者
**
「…地図だと、そろそろ見える頃だな。」
ーーサザラントの街を出てさらに東に進むこと3日。私たちは、ローガスの居城があるという樹海を目指して旅をしていた。
ルヴァーノから送られてきた地図をじっ、と見つめるシドは、草原の道をすたすたと歩いていく。
「ん…?なんだ、あれ…?」
ふとランディの声に顔を上げ、前方へ視線を向けると、道の先に大きなレンガ造りの建物が見えた。そこには、黒塗りの大きな門がそびえ立っている。
のどかな草原に似合わない厳ついその門は、どうやら“関所”のようだ。ここを通らないと先には進めないらしい。
行く手を阻む門を見上げながら建物の近くまでやって来ると、鎧を着たひとりの男性が番所に佇んでいる。
しれっ、と彼の前を通り過ぎ、門へ手をかけたシド。
しかし、その瞬間。寝ぼけていたような男性が、はっ!と椅子から立ち上がってこちらへ叫んだ。
『あぁっ!ちょっと、そこの人!ダメだよ、勝手に通ろうとしちゃあ…っ!』
「あ…?」
鋭い眼光で睨み返したシドに、うっ、と怯む門番。しかし、彼はへこへこしながらこちらへ歩み寄り、門の前で槍を構えた。
『この先はスティグマが生息する樹海。国からも黙認された危険区域なんだ。誰も通すなと“王様”からのお達しさ。』