ヴァンパイア夜曲
門番の話では、樹海の広がる国境に壁を作り関所を設けることで、国を出ようとする旅人をスティグマから守ろうとしているらしい。
シドは、すっ、と胸元からライセンスを取り出して門番に見せる。
「俺はグリムリーパーだ。スティグマ始末の専門職はそこらの貧弱旅人とは訳が違う。自殺願望はねえし、何かあっても自己責任でどうにかする。」
『だめだめ!ここは、王様から許しを受けた“通行許可状”を持つ者じゃないと通せないんだ。』
一瞬で論破されるシド。彼の殺し屋のような形相からは不機嫌オーラがダダ漏れであるが、門番も引く気はないらしい。
地図を広げたランディは、そんなシドを横目にぽつり、と呟く。
「…どうやらこの関所は、ここら一帯を統括する城の管理下にあるみたいだね。そこの王様に許可状をもらうしか道はないか。」
すると、腕を組んだランディに門番が眉を寄せて苦笑した。
『あぁ。お兄さん、それは無理だ。なんせ王様はお忙しい身。スティグマ事件が多発したせいで城の警備も厳重で、一般人なんて面会すら出来ないだろうね。』
(…!!)