ヴァンパイア夜曲
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「…説明しろ。レイシア。」
「一体どういうことなんだい…?!」
城内の大広間。
いつもの数倍黒いオーラを放つシドとランディが私に詰め寄っている。
玉座の前に立つきらびやかな貴族の服を身にまとった青年を視線で指しながら、私は、呼吸もできないほど切迫したような旅仲間たちの勢いに押されつつ口を開いた。
「…彼はタンリオット。セオドルフ王の息子で私より一つ年下なんだけど、この城の第一王子で…」
「あのふてぶてしいガキの名前なんてどうでもいいんだよ。“フィアンセ”ってどういうことだ。」
動揺を隠しきれないシドに、私はおずおずと答える。
「ええっと…、いわゆる“政略結婚”というか…。タンリオットは、私がまだ姫だった時代に純血のヴァンパイアの家同士で結ばれた“婚約者”なの。」
「…っ!」
クールな顔が崩壊するほどショックを受けた様子のシド。固まって動かない彼に、ランディは「気を確かに…!」と声をかけ続けている。
…と、その時。
玉座にコツコツと現れたのは、マントを羽織った白い髭の男性。気品溢れる立ち振る舞いは、“王”の威厳が感じられた。
「おお…!!話を聞いて飛んで来てみれば、本物のレイシアさんではないか…!」
「…!お久しぶりです、セオドルフ王…!」