ヴァンパイア夜曲
セオドルフ王はさらに言葉を続ける。
「ルヴァーノ君とは会ったのか?彼は今頃、どうしているんだか…」
“…ルヴァーノ君、これから一人で生きていくのはさぞ辛いだろう。これは、私からの心ばかりの“手切れ金”だ。持って行きなさい。”
“…っ、そんな…!婚約が破談になった今、“僕”とあなたは、もう何の関係もないのに…”
“いいんだ。…こんなことで君の心の傷が癒されるわけではないが…レイシアさんも、きっと君の幸せを願っているだろうから…”
“…レイシア、か…。その名前を出されたら断れませんね。……では、遠慮なく……”
「…あいつ!ちゃっかり金まで貰っていやがったのか…!」
「さすが…。抜かりないね、ルヴァーノさん…」
シドとランディの言葉に、私はいたたまれなくなる。
…兄は底知れない男だ。
おそらく、“ん?マジ?婚約は破談にさせたしこっちの目的は達成なんだけど、まぁ、貰えるもんは貰っとくか。”といった感じのノリだったのだろうが、まさか、ここまで完璧な外ヅラで演じ切っていたなんて思ってもみなかった。
一人称が“僕”の時点で、爽やかで品のある王子モード全開だ。
ーー全ては兄の策略だったなど、目の前の王には口が裂けても言えない。