ヴァンパイア夜曲
三人がはっ!としたその時、王は静かに言葉を続ける。
「今、私が通行許可状を出したところで、関所の向こうには“濃霧”が立ち込めておる。今まで何人もの旅人がローガス退治に出向いたが、その濃霧のせいで居城にも辿り着けず、姿すら拝めず樹海に生息するスティグマの餌食となった。…今、君たちが出向いても、末路は同じだろう。」
「!」
「ーーだが、この城からさらに南にくだったところに、リスターノという“ゴーストタウン”がある。聞くところによると、樹海の濃霧はその町から放たれているらしいのだ。」
王のその先の言葉を察したランディは、目を細める。
「…つまり、そこから放たれる濃霧の原因を突き止められれば、関所の向こうに通してもよいと…?」
すっ、とこちらを振り返り、わずかに顔を伏せた王。試すような瞳が私たちをとらえた。
挑戦的にニヤリ、と笑ったシドが、ばさりと黒コートを翻す。
「その話、のった…!日が落ちるまでにケリをつけてやるぜ。」
俄然、やる気が出たようなシド。廃墟の調査と聞いて、グリムリーパーの本能が疼いたのだろうか。
レイピアを磨くランディも、本腰を入れて臨むらしい。