ヴァンパイア夜曲

三人がはっ!としたその時、王は静かに言葉を続ける。


「今、私が通行許可状を出したところで、関所の向こうには“濃霧”が立ち込めておる。今まで何人もの旅人がローガス退治に出向いたが、その濃霧のせいで居城にも辿り着けず、姿すら拝めず樹海に生息するスティグマの餌食となった。…今、君たちが出向いても、末路は同じだろう。」


「!」


「ーーだが、この城からさらに南にくだったところに、リスターノという“ゴーストタウン”がある。聞くところによると、樹海の濃霧はその町から放たれているらしいのだ。」


王のその先の言葉を察したランディは、目を細める。


「…つまり、そこから放たれる濃霧の原因を突き止められれば、関所の向こうに通してもよいと…?」


すっ、とこちらを振り返り、わずかに顔を伏せた王。試すような瞳が私たちをとらえた。

挑戦的にニヤリ、と笑ったシドが、ばさりと黒コートを翻す。


「その話、のった…!日が落ちるまでにケリをつけてやるぜ。」


俄然、やる気が出たようなシド。廃墟の調査と聞いて、グリムリーパーの本能が疼いたのだろうか。

レイピアを磨くランディも、本腰を入れて臨むらしい。

< 158 / 257 >

この作品をシェア

pagetop