ヴァンパイア夜曲

ーーと、その時。タンリオットがふと足を止めた。

その視線の先にあるのは、木々の生い茂った道。入り口を塞ぐように錆びた鎖が木に巻き付けられている。


“リスターノ”


古びたボロボロの立て看板に書かれた町の名前。どうやら、目的地はこの先にあるようだ。

伝染病が流行っていたからだろうか。昔の名残で侵入者を拒んでいるらしい。

チャリ…、と鎖に手をかけるシド。びくりと怯えるタンリオットが思わず声を上げる。


「ち、躊躇もせずに行くつもりか!!鎖を断ち切った瞬間祟られたらどうする?!!幽霊がすぐそばまで迫ってきているかもしれないんだぞ!!」


「鎖を解かねえと先に進めねえだろうが。」


シドはベイリーン家の門もぶっ壊して侵入しようとした男だ。躊躇なんてするはずがない。

ついに町へと続く獣道に足を踏み入れた私たちは、鬱蒼と茂る森へと歩き出した。そこはまるで迷路のようで、光が全く差し込まない暗闇だ。


「ひいっ!む、虫だ!!蜘蛛の巣まである!!なんだここは…!!王子であるこの僕が立ち入るエリアではない…っ!!」


「あー、もー、うるせえな…。じゃあさっさと帰れ。もう町は目の前だ。」


「今さら帰れるわけないだろう!一人の時に幽霊が出たらどうするんだ!!僕を置いて行ったら許さないぞ…!!」


「…クソうぜえ…」

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