ヴァンパイア夜曲

ーービュゥゥゥ!


その時、割れた窓ガラスの隙間から吹きこむ風。

バラバラと自然にめくられる日記のページに日記を開く手がこわばった瞬間。日記の隙間に挟まれていた“紙”が、ひらり、と床に落ちた。

栞の類かと思ったが、それを拾い上げた瞬間、はっ!とする。


(…“写真”…?)


そこに映っていたのは、“若い男女”。

古びた写真は色あせていて、女性の顔はインクが薄い。しかし、彼女の想い人であろう彼の顔を見たその時、私は呼吸さえ忘れた。


「ねぇ、シド…っ!」


シドは、名前を呼ばれてこちらに歩み寄る。私の表情からただならぬ気配を察した彼は、真剣な顔で写真を手にとった。

見開かれた碧眼に、写真の“彼”が笑う。

シドは、無意識にその名を口にしていた。


「……“ローガス”……?…!」


ーーガタン!!!


(!!)


次の瞬間。

ふっ、と辺りを包む霧が濃くなった。

部屋の外から聞こえた大きな物音は、仲間のものではない。


「…っ!なっ、なんだ?!!!」


タンリオットが青ざめて叫んだその時。

微かに耳に届いたのは、古びた“オルガンの音色”だった。


♪〜♫♩♪〜♬〜♪♩♪


誰もいないはずの教会に響く音。

まるで共鳴するようにガタガタと鳴る窓に言葉を失う。


「ーーっ。」


「?!た、タンリオット?!」


ドサ!と倒れこむタンリオット。恐怖のあまり気絶したらしい。

とっさに支えたランディも、ごくり、と喉を鳴らす。

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