ヴァンパイア夜曲
そこまで言いかけて、はっ、とした。
この後、なんて言葉を続ければいいんだ?
“どうして、タンリオットのお嫁さんになることに怒ったの?”
“どうして、(首に)キスなんてしたの?”
山ほど出てくる言葉は、全て口に出すのが恥ずかしい。
私は、その先を期待してしまっている。
しかし、私だけの思い違いだったらどうしよう。
「…なんだよ。」
低く聞こえるシドの声。
思わず言葉を詰まらせた私に、すっ、と目を細める彼は、私の問いを待ってくれているようだ。
落ち着いた様子のシド。
きっと、今、何を言ったとしても、彼は誠実に返してくれるだろう。
「…昨日言ってたことって、どういう意味…?」
“俺はもう、お前に血も心も奪われてんだ!俺だって、お前を欲しくなって当然だろ!”
あの言葉は、何よりも私の心を震わせた。
無愛想で一匹狼のシドが初めて語った本音が、嬉しかった。
すると、数秒の沈黙の後、シドは小さく呟く。
「俺はお前に血をせがまれたら、絶対に断れない、ってことだよ。」
「…?」
「…全部言わなきゃ、わかんねえのか?」
すっ、とわずかに屈むシド。
至近距離で交わる視線に、胸が鳴る。
「ーー俺はお前に惚れてるから、全てを差し出す覚悟がある、ってこと。…覚えとけ。」
(!!)