ヴァンパイア夜曲
導かれるまま進む私たち。
先頭を歩くシドが門の前で立ち止まったその時。行く手を阻むのは、色白の少年だった。
『生きテいるトハ、珍しい。アナタもローガス様に会いに来タのですカ?』
カタコトの言葉。
何とも言えない不気味な感じが、ひしひしと伝わってくる。
操られたロボットのような少年からは温かみを感じられない。ぱちりとした二重の瞳が、じぃっと私たちを見つめていた。
「そうだ。さっさとその門を開けてくれ」
切り出すシド。
すると、少年は静かに首を傾げた。
『コノ先に、進ムおつもりですカ?』
「あぁ」
すると、想像していたよりも滑らかな動きをした少年は、すんなりと門の取っ手に手をかける。
拍子抜けした私たちが目を丸くしていると、少年はぴたりと手を止めた。
『コノ先ハ、二手に分かれテいます。そしてソレゾレに門番として僕の弟たちがいマス。』
「…!」
『一人はショウジキモノで、もう一人はウソツキ。門番に正しい道ヲ聞けるのは一度だけデス。間違えたら、ミンナ死ぬ。』
語られた言葉に、ぞくり!とした。
つまり、一方の道はローガスへの居城に続く道。そして、ダミーの道はスティグマの巣窟。
一度きりの問いで正しい道を見極められなければ、その先は死だ。
やっと長い間ローガスが討たれていない理由が分かった。
“生か、死か”
この選択が全てを決めるのだ。