ヴァンパイア夜曲


ゴゥン…!!


重い門が開いた先は暗闇だった。

所々に灯るランプの明かりが一本道を照らしている。


『逝ってラッシャイ。サヨウナラ』


にこりともしない少年は、ふっと姿を消した。

最後に残された言葉はひどく不気味だ。

震える指。

ここはどんな常識も通用しない。生きているのか死んでいるのか、それさえもわからないものがうじゃうじゃいる。

まるで、時を止められたローガスが作り出した幻術に取り込まれ、蝕まれていくようだった。


その時、ふと、シドが私の手を取った。

彼を見上げると、気遣うような瞳がこちらを見つめている。

頭をよぎる既視感。それはまるで、カナリックの地下水路で二人で歩いた時と同じ光景であった。


「わ、私、怖くないよ?」


「そうかよ」


私の心を見透かしたような声。

繋がれた手から、じんわりとシドの体温が伝わる。

安心させようとしてくれてる?

そんな気遣いに、心が震えた。


シドを見つめていると、おもむろに掴まれる片手。空いていた左手を掴んだのは冷ややかな瞳の兄である。

私を挟んだ無言の攻防に後ろを歩くランディとエリザが目を細めた。


「シドってば、ここで煽らなくたっていいのに…」


「団長、大人げない…」


敵の本拠地で何をやっているんだろう。

さっきまでのシリアスムードが台無しだ。

まるで子どもの手繋ぎ遠足のような光景にため息をついた後ろの二人だが、やがて見え始めた広間に、一同がはっ!と足を止めた。

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