ヴァンパイア夜曲
(!!)
響く少年の声に、ルヴァーノはふっと微笑んだ。
こちらを振り返った彼はグレーの瞳を細めて告げる。
「決まりだ。正解は右の道。左を選んだら全員死ぬぞ」
鮮やかなやりとりに言葉を失う私たち。
門番の罠をいとも簡単にかわした兄に、私は思わず駆け寄る。
「すごい、お兄ちゃん…!どうしてすぐ答えに繋がる質問を思いついたの?」
「簡単な謎解きだよ。天国か地獄かを選ぶロジックパズルは有名だろう。…それにしても、門番にこの謎かけを課すとはね。不本意ながら、ローガスとは読む本の趣味が合うらしい」
複雑そうに眉を寄せる兄。
しかし、これで道は開けた。
攻撃を仕掛ける素振りもなく、右の門を開けた少年たちはゆらりと煙のように消えていく。
門の向こうに広がっていたのは、明るい空とまっすぐ奥に続く道。
そしてその先に見えたのは、天高くそびえ立つ城だった。
一歩外へ出ると、ザァァと城を囲む樹海がざわめく。
その隣に門はない。
左を選んでいたら、その先はどこに繋がっていたのだろう。
「…やっとここまで来たな。さっさと長年の鬼ごっこにケリをつけさせてもらわないと」
兄はそう言って城を見つめた。
遠くを見るような瞳は、天に還った両親と、散っていった同胞を映しているようだ。
五人の前に立ちはだかる荘厳な扉。
城の内部へと続く扉に、シドがごくりと喉を鳴らした。
「行くぞ」