ヴァンパイア夜曲

さっ!と血の気が引く。

私は動揺が隠せず、シドの肩を掴んで声を震わせた。


「ご、ごめんなさい、シド…!まさか、こんなことになるなんて…!!」


シドの命を救うため。

いや、私がシドに会いたいと願ったために起こった事件。

まさか、ヴァンパイア化だけならまだしも、私の血しか飲めない体になってしまうなんて。

シドの人生を狂わせたのは私だ。


ふと、視界に影がかかる。

私を覗き込むように見下ろすシドは、静かに答えた。


「謝って済むと思ってんのか?」


じり…、と距離を詰めるシド。

いつもの碧眼が、ギロリと私を睨む。


「こっちはお前と会えない間、ずっと我慢してたんだぞ。…もちろん、大人しくしてくれるよな」


まずい。

私も、シドの血を我慢していた時期があるからこそ分かる。

ヴァンパイアにとって、本能である吸血欲を抑えることはとてつもなく苦痛だ。飢えが酷くなればなるほど体の熱は高まり、喉の渇きに耐えられなくなる。

私は、今までシドにたくさん血を貰ってきたのに、まさか、私が結婚式の準備をしていた間、ずっとシドに我慢させていたなんて気付かなかった。

私は後れ毛を耳にかけ、首を示す。


「いいよ、シド…!」


「…!」


「ごめんね、好きなだけあげるから…!」

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