ヴァンパイア夜曲
その時。
私に追いついたシドが、はぁ、と息を吐いた。
おもむろに掴まれる手。
軽く引かれ、はっとする。
「引っ付いてろ。はぐれんなよ」
「え?えっ??」
きゅっと繋がる手。平然と絡められた指にどきりとする。
「な、何で??」
「あ?連れが迷子になったらめんどくせえだろ」
「そうじゃなくて…!」
私は、てっきりシドとはこのままお別れするのだと思っていた。修道院を出た私と彼はもはや何の関係でもないのだから。
すると、シドは私の動揺の理由を察したらしい。碧眼を細めた彼は低く唸った。
「姫育ちの世間知らずが一人でやっていけるわけねえだろ。その辺で急にヴァンパイアの血が目覚めて人を襲うかも知れねえし」
「ばかにしてるでしょう…!そんなことしません!」
彼は何やかんや言いながらも、私の手を離そうとしなかった。
むっとして見上げると、彼はこちらを見ずに低く続ける。
「俺たちが出会ったのは神のお導きなんだろ?」
「え?」