ヴァンパイア夜曲
第2章*ダンピールと医者

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「クソ!宿屋はどこだ!」


修道院を出てから三日後。

ノスフェラトゥの本拠地を目指す私たちは、東に向かってひたすら旅を進めていた。

ベンタウン地方から東へ続く橋を渡って森を抜けると、そこにはカナリックというベンタウンより少し栄えた土地があり、のどかな風景が広がりながらも街は活気にあふれている。

廃城で私とシドを襲ったスティグマたちもおそらくこの方角からきたはずだ。彼らが辿ったであろう道を引き返して旅をすることが今は最善の方法なのである。


そして現在。

時刻は日も暮れた午後九時。

私とシドは、二人旅を始めてから初めて到着したカナリックの街で迷子になっていた。


「もう!シドが地図も見ずにスタスタ歩くから迷ったんでしょう…!」


「俺はお前の勘を頼りに歩いてきただけだろうが!ったく。なんだこの街は…!水路だらけで迷路じゃねえか!」


夜に包まれた街を眺めてみると、あちこちに水路が張り巡らされており、車の代わりに船が人や荷物を運んでいるのが見える。

どうやら、豊かな水に恵まれたカナリックの街は水上の乗り物が発達しているが故、入り組んだ複雑な作りになっているようだ。

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