ヴァンパイア夜曲
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市街が夜の静寂に包まれた深夜。
今日が昨日に変わる頃、私はシドの部屋の扉をノックしていた。
周りの部屋を気遣うように音を立てずに開かれた扉の向こうに、風呂上がりのシドがいた。
「ごめん。…ちょっとだけ、いい?」
碧眼をわずかに細めた彼は、ちらりと時計を見るが、やがて「入れよ」と私を通して扉を閉めた。
促されるまま椅子に腰掛けた私は、窓際に立つシドを静かに見つめる。
「なんだよ。こんな時間に」
沈黙を破ったのは、シドだった。
おずおずと口を開く。
「…謝ろうと思って…」
「は…?」
眉をひそめた彼に、私はそっと続けた。
「シドの忠告を聞かずに出て行ったのに、結局迷惑をかけることになっちゃったから。…ごめんなさい…」
「…別に、お前のせいじゃねえだろ」
わずかに濡れた髪をかきあげたシド。
ぶっきらぼうだが、いつもより少し柔らかい口調が心に染みる。
何だかんだいって、街にスティグマが現れたと知ったら、私を探しに来てくれた。
シドは、やっぱり優しい。
「ゴードルフを、撃ったのね」