ヴァンパイア夜曲
「ち、違うの、ランディ!私たちは別に、そういう関係じゃ…!昨日はたまたま、お互い疲れていたというか!」
思わず焦って早口になっていると、寝起きで人一倍人相が悪いシドが、コツコツとこちらへ歩み寄る。
「ランディ、なんでここに…?」
「し、シド!ちゃんと服を着て!ばか!」
寝ぼけている彼のはだけたシャツのボタンを急いではめていると、くすくすと笑ったランディは楽しそうにこちらを見つめる。
そして、私たちの反応を伺うように、そっ、と首をすくめて口を開いた。
「今朝は、お願いがあって君たちに会いに来たんだよ」
(お願い?)
その時、シドが何かに気がついたように呟く。
「お前、その大荷物…」
シドの言った通り、彼は散歩に出た割には大きすぎる荷物を抱えていた。
すると、ランディはニコリと笑って言い放つ。
「あぁ、これ?家を出て来たからさ」
あまりにもさらりと告げられた爆弾発言に、ふたりそろって目を見開く。
そして次の瞬間。笑みを崩さない翠瞳の彼は、さらに想像を超えた一言を放ったのである。
「僕も、君たちの旅に連れてってよ」
数秒後。
「…あー、夢か…」と呟いたシドが真顔でベッドに潜り込んだことは言うまでもない。