付き合ってないんだよ…ね?環くん。【短】

チョップを打ち込まれた額をさすっている田中さんを振り返り、環くんが「美空」と呼んだ。



「それ、スカート短すぎねぇ?」


「へ?あ、これ?友達が、こっちのが可愛いって言うから短くしてみたの」


「もうちょい下ろせ」


「え?なんで?へ、変だった?」


「ちげーよ」



僕は、田中さんと会話する環くんの表情を見て目を丸くしていた。


いつもクールな環くんが、あの何にも興味がありませんって顔の環くんが。



「俺以外のやつに、そんな足見せんな」



ちょっと甘えたような、拗ねたような、そんな表情で彼女を咎めたのだ。



な……な……。


た、環くん、それは、彼女でもない人に言うセリフじゃないと思うんですが……!!


僕には好きな人なんていた試しがないし、定かではないけれど。


これは……いわゆる“独占欲”というやつでは……?



困惑している僕の横で田中さんは、頬を真っ赤に染め、目をギンギラギンに輝かせながら。



「見せましぇんんんん!!!!」



と叫んで、腰で折っていたスカートをグイグイ下げ始めている。


鼻息がすこぶる荒い。


そんな彼女に「バーカ」という言葉を残して、環くんはまた背を向け、屋上から出ていってしまった。




屋上に取り残される、僕と田中さん。



「や、山田先輩……聞きました?今の……聞きました……?や、やばくないですか……?ハァハァ」


「う、うん」
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