付き合ってないんだよ…ね?環くん。【短】
いや、キミの顔のが大分やばいよ田中さん……。
瞳孔が開いて目が血走っている田中さんに顔を向けられ、彼女から離れるように半歩下がる僕。
ここで僕は、ついさっき環くんにした質問を、もう一度彼女にぶつけてみることにした。
「あの……さ、田中さんと環くんは……その、本当に付き合ってないんだよね?」
そう言うと、変態一歩手前の顔から一変。
しゅんとした子うさぎのようにしおらしくなる田中さん。
こうしてると、儚げな美少女そのものなのに……。
「……残念ながら、本当に私の片想いなんです」
なんだ。
じゃあ、やっぱりさっきの環くんのセリフには、特に深い意味はないということなのか……?
「こっちは言葉を覚えるより先に環くんを好きになって、もう何万回と告白を重ねてるってのに、環くんは毛ほどもなびきやしません」
「何万……。そ、そうなんだね」
僕だったら毛ほどもなびかない子に、あんな言葉を言うだろうか?
まぁ。僕と環くんじゃ比較にもならないのだけど。
「でも、私はめげません!環くんを好きな気持ちは、絶対に誰にも負けないので!どんなに時間がかかろうと、絶対絶対環くんのハートを射止めてみせます!」
胸の前で握りこぶしを作り、堅い決意を瞳に宿して、凛とした表情でそう言う田中さん。