櫻春風花ーかざはなー
「ホントだ~……
あ!」
屯所に戻って来ると、屯所の前に、一人の少女が立っていた。さきほど建てた看板をじっと見つめている。
「誰かに用があるんですかね?」
「いや、それはないだろう。」
そう、浪士組は京に上ってまだ日の浅い、言わばよそ者。
そんな集団に用がある者など、いるのだろうか?
しばらくたってもその場を動かない、看板を眺めているだけの通行人でもなさそうだ。
いろいろと考えを巡らすが、それらしい答にであうことはなく、「ここ(屯所)に何か用かね?お嬢さん。」
声を掛けてみることにしたらしい。
「っ!?」
近藤が声を掛けると、驚いたようで、勢いよく振り返って、瑠璃色の瞳で三人を見つめる。
「!?(異人か?)」
やはり驚きの色を隠せない近藤。
なにせ、この時代には、外国人ハーフや、カラーコンタクトなど、そんなものはもちろん存在しないわけで、日本人ではありえない瞳の色であるのだ。少女は、青い瞳を大きく見開き、じっと近藤を見上げていた。