真宮ゆずはあなどれない。
真宮ゆずはあなどれない。

昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り、散らばっていた生徒たちがぞろぞろと自分の席に戻っていく。


そんななか視界の端に捉えたのは、

なぜか赤くなった目を限界まで見開いた般若のような形相で、一直線にこちらに向かってくる“ヤツ”の姿。


その瞬間、僕はほぼ反射的に逃げ腰になり、ジリッと椅子を引いた。


ああ、嫌なよか……



「柾樹(まさき)ぃぃぃぃ!」



……やっぱり!


その剣幕に、思わず喉の奥からヒッと声が漏れる。



「なっ、なんだよ」



なるべく毅然に返したつもりなのに、思ったよりも上ずった声がでてしまった。


しかし彼女にはこちらの声なんてちっとも聞こえていないらしい。


机に体当りする勢いで突っ込んできたと思ったら、いきなり胸ぐらを掴みあげられる。



「ぐぇっ」



今度こそ、アヒルの鳴き声に似た悲鳴が声に出た。


周りの生徒たちはその声につられてこちらを見るが、いつものことだと視認すると、すぐに興味なさそうに授業の支度へ戻ってしまう。


いやいや、ちょいちょい。


あのさ、もう少しどうにかしようとか……そういうのあってもいいと思うんだけど、どうだろう。
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