真宮ゆずはあなどれない。
「いいの、それで。真宮は」
「えっ、いいのって……そんなの良いに決まってるよ。だってあたし、ずっと柾樹が好きで、ずっと彼女になりたいって思ってて、そのためにずっと意識してもらおうとアレやコレや頑張ってたし……」
もぐもぐと噛み締めるようにそう言うと、柾樹の顔がはじめて動いた。
ピクッと動いた唇と、ほんのり赤みを帯びた耳。
思わず感動しておお!と声をあげると、柾樹は不快そうにあたしの頬をもう一度むにっとつまんだ。
「その口、開かなくしてあげようか」
「も、もひかひて、意外に、へふなの……?」
「S、かどうかはわからないけど。まぁ……好きな子はちょっといじめたくなるかもね」
ふっ、と目を細めた柾樹にふたたび唇を奪われるまであと数秒。
「ねえ、ゆず――」
その前髪の下、そろそろ見せてくれないかな……とか思っていたあたしを不意打ちで呼んだ柾樹。
大きく目を見開くと同時、
「俺と、付き合う?」
そんな甘い囁きが、あたしの唇に触れ合った。