茜

忘れない色

僕は、もう何年も前の日記を読み返し静かに閉じた。

(我ながら、もう話すことも出来ないのにいつまでも引きずって情けないな…。)


【茜色】がよく似合う君は、もうここには存在しない。

【茜】は、昔からからだが弱く、高校生の時に悪化した病のせいで二度とその目が開く事は叶わなかった。

相変わらず僕の目は、色が見えないままで、度々こうして日記を読み返しては…自己嫌悪に浸っている。

だけど、【茜】も酷いと思う。最後に言った言葉が…

『私の【茜色】を忘れないで。分からなくても、覚えていて。』

だなんて。

(僕が、忘れられるわけないじゃないか…。)

出来るなら、一度で良いから【君の茜色】を目に焼き付けたかった。

そしたらまた君と、くだらないけど大切なあの時間を感じる事が叶うだろうか。




僕はまた、【茜】を思って涙を流す。