恋愛イデアル。
食卓と晩ご飯。
·食卓と晩ご飯。

冬が再びやってきた。
長月遥は自宅に戻ると着替えると食卓で用意されていた晩ご飯を食べる。
テレビでは景勝地の番組が写っていた。それはいたって平穏な風景といえた。

長月遥はスマホでヒューズについて調べる。親戚の家でヒューズが切れたらしいので。その噂を妹である長月ケットが話題にしていた。その行為にはある種の現実が浸透するような空しさがあった。しかしふと長月遥は気を取り直す。

小説を思い出したからだ。

「薄情」という表題の小説のこと。
それは地方社会の人間関係を扱ったものであり今の長月遥はそれに直面している、とそう言えたからだ。

したがってヒーローやヒロインという問題から一見離れたところに、今の日本社会の課題があると見てもいい。それはつまりケータイ小説側も何か共有すべき課題だと言えた。

地方社会の人間関係だろうか。
長月遥は人間関係を維持するための予算を考え、長月ケットとともに行動をともにする。
長月ケットは鼻歌交じりに宿題をしていた。食卓で。同席した長月遥は食卓で手にした文庫本、ドゥイノ悲歌を読み、とふと将棋やチェスを何年間も夢中でしていたことを思い出して、思いもがけず内面で涙を流したのだ。
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