恋愛イデアル。
隧道(トンネル)。
隧道(トンネル)。

イデアルはふと散策する。春昼。

裏山だ。道があった。

小さなトンネルがある。

人がひとりしゃがんで通れるほどの。

それが山の中腹からずいぶんと続いているようだった。

暗闇だ。その冷たさ、感じた暗い気配にイデアルはぶるりと震えた。

「剣呑、剣呑」とイデアル。珈琲のプルタブ缶をごくりと一口。

トンネルから遠ざかる。

数日後のこと。雨が降ったあと。教室で。

「崖崩れがあったらしいわね」と長月遥。

「そうなんだ」とイデアル。

イデアルはその隧道で感じた殺気めいた気配を思い出して、身体がぞくりとするのを感じた。
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