365日のラブストーリー
「神長です」
声を聞いた瞬間に、準備していたはずの最初の言葉がはじけ飛んだ。
「おはようございます、綿貫ですけれど」
「ああ……、すみません。登録のない番号だったので。おはようございます、体調はどうですか」
仕事用の硬い声が穏やかになる。スピーカーの向こう側でどんな顔をしているのか想像して、さらに鼓動が早くなる。有紗は道の隅に寄って立ち止まった。
「すごく良くなりました、ありがとうございます。今日から出勤です。あ、さっき駅で宇美さんと会って、財布のこと電話してくださったって聞いて」
「念のため伝えておきました。宇美部長ならわざわざ他に言いふらすようなこともしないでしょうし」
「はい。ほんとうに、ほんとうに助かりました。あ、お金を返したいんですけど。……どうしたら」
人事部に来てもらうのも目立つが、用もないのに総務部に下りて、システム課に寄るのはもっと人目につくだろう。
声を聞いた瞬間に、準備していたはずの最初の言葉がはじけ飛んだ。
「おはようございます、綿貫ですけれど」
「ああ……、すみません。登録のない番号だったので。おはようございます、体調はどうですか」
仕事用の硬い声が穏やかになる。スピーカーの向こう側でどんな顔をしているのか想像して、さらに鼓動が早くなる。有紗は道の隅に寄って立ち止まった。
「すごく良くなりました、ありがとうございます。今日から出勤です。あ、さっき駅で宇美さんと会って、財布のこと電話してくださったって聞いて」
「念のため伝えておきました。宇美部長ならわざわざ他に言いふらすようなこともしないでしょうし」
「はい。ほんとうに、ほんとうに助かりました。あ、お金を返したいんですけど。……どうしたら」
人事部に来てもらうのも目立つが、用もないのに総務部に下りて、システム課に寄るのはもっと人目につくだろう。